2019年08月24日

A965:流浪の名門



どうも、モッズおじさんです。


このロゴを見て「お?」と思う人は 多分ほとんどいないでしょう… もし「お?」と反応した方がいたとしたらその方は
相当な好事家とお見受けした… そういう代物をこういうタイミングで手に入れてしまったんです.






さてこないだ終戦記念日を迎えて 平和への思いを新たに… してくれないと困るワケですが

その8月15日に 俺の手にとんでもないパイプが届きまして。。。

コレはほぼ運命とすら思えるような展開でして

個人的には『外に持ち出し禁止』の縛りを入れたワケですが



例によって喫煙の話なんで 未成年者と禁煙ファシストとユーゲントは『続きを読む』はご遠慮ください。


 



第2次大戦は人類最悪の大量虐殺が実現してしまった最悪の経験だっただけに

「生き残った」喜びは悲しみと共に最大級だったワケで 戦後に空前のルネッサンスが開花したんっすよ。



第1次大戦開戦当時は兵役志願者が殺到して… 当時戦争に参加するのは名誉な事で 皆さん結構呑気に「クリスマスには帰る」と
ピクニック気分 だったらしいけど蓋を開けると大砲と機関銃の出現で塹壕にへばりついて出られない泥仕合に…






その流れに乗って巨大企業に成長したブランドのひとつがDunhill なんですが

それ以前 つまり第2次大戦前の話ってのは 意外と知られていない… で研究家の間では

近年 第1次世界大戦との繋がりから第2次世界大戦を紐解いていこう っつー研究が成されていて

。。。つまり第1次大戦の戦後賠償が膨大過ぎて ドイツ国内ではナチスの台頭を許してしまった とか



ドイツ・オーストリア軍は膠着する戦闘の切り札として 当時肥料の開発で偶然生まれたマスタードガスを敵塹壕に投入
対してイギリス軍は戦車を投入 で人類は大量殺戮というパンドラの箱を開けてしまったワケで…






戦勝国でもイタリアと日本は多大な貢献したのに分け前少ない・3等国扱いでふざけんな っつって

当時の2大大国・イギリスとフランスに反旗を翻した とか。

要するに国際政治におけるイギリスとフランスのコンプライアンス無視の自国最優先の傲慢さが

1度終結した戦争を再燃させてしまった。。。と。



俺らの世代だと Leeds っつったら the Who の名盤 LIVE at LEEDS で 繋ぎ着て大車輪とか 骸骨の繋ぎとか 70年代以降の
Rock のとても正しい基本スタイルが 大体こん中に詰まってるんっすね.





どこかの国のゴリラみたいな fake president の言動を思い出しちゃうんだけどそれはさておき

今回入手したのが Ben Wade 27 Dublin っつー 元々パイプ卸を営んでいた Benjamin Wade が

1860年にヨークシャーの Leeds で創業したブランドのパイプなんっすよ。

俺らの世代で Leeds っつったら the Who が直結で出て来るんだけど



コレが今回入手した Ben Wade 27 Dublin で Family Era(家族経営期) の頃のパイプです. Lane Ltd. が買収するまで確実に
London でも1・2位を争う喫味の良さとクオリティで… 見ただけで良いパイプ って 分かりますよね?






Samuel Gawith と同年代 っつー事で 実に『英国的』なデザインのパイプを作る家族経営のブランドで

当時のLondonでも Charatan’s と比較されるほどのクオリティと喫味の良さで有名だった

『名門』のひとつだったんっすね。。。

1965年には US のLane Ltd. が Charatan’s と一緒にブランドを買い上げて



戦後のBen Wade は LONDON ENGLAND と刻印が打たれますが このパイプはシャンク裏に LONDON MADE と打たれてて
Ben Wade 最盛期の戦前物の特徴が見て取れる ってのが痺れますね.






Charatan のセカンドブランドとしてブランド銘だけは生き残ったんっすけど

1988年位にブランド銘も消滅してしまったんっすね。。。

名門の末路はいつもこんなものか と一抹の寂しさも覚えますが

ところがLondonのパイプメーカー Duncan Briars によって1998年に復活するんっすよ。



掃除用のモールが出来る前の英国パイプにはアルミのインナーチューブがお約束 でこのBen Wade にも本来はインナーチューブが
付いていたようですが… 購入時にはついてませんでした. その分 安くなってましたけどね?






で、Duncan さんは義理の弟 Peter Wilson 氏にブランドを譲って

現在のLondon由来のデンマーク製フリーハンドパイプのブランドになるんっすよ。

こうして名門が受け継がれていった。。。っつー『イイ話』で

戦前の Ben Wade はトラディショナルで『英国的』な ちいちゃい火皿が多いメーカーだったんっすけど



あとで誰かが作為的に削った というワケではない ラウンド上に仕上げたリップに合わせて煙道が開けられたラウンドリップは
まさにWW1終結~WW2勃発迄に生産された Ben Wade パイプの特徴で 大英帝国最盛期の頃のパイプ 確定です.






今回手に入れた Ben Wade は。。。 決定的なのがステムのリップ形状がラウンドっつー

Ben Wade が1920~40年頃 に施していた処理で Ben Wade のホットスタンプ入り で

第1次大戦終結~第2次大戦勃発 の頃のパイプっつーのが確定なんっすね。

で この当時は Leeds に工場があって London に店舗があったそうですが



とにかく佇んでるだけで説得力のあるパイプで 一切のパテ埋め補修が成されていないのが見事の一言に尽きるワケで
最高のブライヤーを使ってる ってワケですよ.


A965:流浪の名門



第2次大戦中に Leeds 工場はナチスの空爆で破壊されてしまい 戦争中のパイプ製造は以前から

稼働していたLondon で一括で作ってたんですね。。。 っつー事でボウルには London Era と呼ばれる

1965年までの特徴も見て取れるんっすよ。

もちろん 第2次大戦後に作ったボウルに 戦前に作って余った Leeds 工場製のステムを付けた って可能性もあるけど



オーバル(楕円)・シャンクの中の煙道は… 数回使用された痕跡はあるモノの とてもキレイ. 最近作られたかのようなコンディション
ですが 確実に80~100年前に作られたパイプっつーから… 新鮮な驚き.






多分余る前にナチスの爆弾で粉々になって残ってないでしょう… と考えるのが自然で

どうやら1920~40年頃に既に London の店舗でもパイプ生産を始めていた と判定して良いのではないか と。

にしてもすこぶる状態が宜しくて 数回喫っただけ っつーコレクターズ・アイテムだったようで

とても100年前のパイプには見えない極上のコンディションでして



手持ちの伝わりやすいボウルサイズ比較をしますと… Dunhill グループ1(黒)と Parker グループ4(真ん中) と比べると
一目瞭然 まるでUSパイプのように やたらデカい… コレも新鮮な驚き.






だから『持ち出し禁止』なんっすけどね?

で Leeds 期の特徴である「ちいちゃい火皿」とは真逆の デカい 超デカい火皿 ってのもユニークで

このサイズがバンッバン売れたかどうかは謎だけど 第1次大戦で生き残った喜びから

「欲望最優先」でタバコ喫いたい っつー需要があったみたいっすね。



既に数回喫われた痕跡はあるけど オイルキュアード臭がプンップンなワケですよ… とにかくデカい火皿で ココまでデカいと
俺もうラタキアしか思い浮かばねえ… ラタキア詰めるしか思いつかねえよぉ…






実際俺の手持ちで一番デカかった US Ideal Mfg. のパイプよりデカい火皿で

このサイズなら迷う事無くラタキア っつーのが俺の方程式。

っつー事で このパイプと同年代の『名門』・Samuel Gawith の COMMONWEALTH を詰めて

火を落としますってえと……… コレクターが悲鳴上げそうだけど



もちろん今まで喫ってる Parker や BBB でも充分美味しいんだけど 同じ COMMONWEALTH が別次元の旨さに昇華する…
戦前パイプにハマる理由が 分かったような気がします.






うめえ… コレまたすぐ旨くて旨味が深い。。。 いわゆるナッティな旨さで 甘い。。。

表現が難しいんだけど 間違いなくこのブランドもオイルキュアード物と思われて コクが深い。

このコクの深い上品な甘みの引き出し方は 手持ちの Hardcastle’s を思い出させますが

他の何と言い比べたらよいのやら… 少なくとも ドーパミンは出まくる深い甘みです。



エルキュール・ポワロはまさにこのWW1~WW2の大英帝国繁栄期の時代が舞台で 戦勝国が富と繁栄に酔いしれていた時代で
ポワロはその時代の闇を『観察』していたワケで… ポワロのタバコは ソブラニーのブラックロシアンです念のため.






年代で言えばHOLMESより後の ポワロの時代… 享楽の大英帝国の繁栄と忍び寄る独裁者の

毒牙に怯えるあの時代に 酔い痴れるには充分すぎる官能的な喫味で

。。。完全に人をダメにするパイプだなこりゃ

戦前パイプは美味しい っつってハマる好事家の心境が 分かったような気がします。



戦前のパイプで London に対してLeeds はさしずめ日本の東京に対して茨城のつくば学園都市… って事で好事家の間では
『地方都市のDunhill』と呼ばれているけど デザインは少々素朴で野暮ったいのが 却ってカッコ良かったりする.






もっと言ってみれば コレだけのクオリティのパイプを「時代の流れ」ってだけで消滅させるのは

実に惜しい… 文化の損失 と感じるのももっともで 嫌煙家運動が過熱していたあの頃に復活して

現在に至っている ってのも このパイプブランドを語る上で実に説得力のある話でして

。。。 とんでもないパイプを 手に入れてしまった。



禁煙ファシストには こういう大人の楽しみがなくて 残念ですな。


 



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Posted by モッズおじさん  at 00:48 │Comments(0)大人の趣味 パイプタバコの話

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